電子書籍

「現代優生学」の脅威

池田清彦

¥820(本体)+税   
発売日:2021年04月07日

差別・隔離・排除は過去の話ではない
戦後、一度は封印されたはずの「優生学」が奇妙な新しさをまとい、いま再浮上している。これまで人類は、優生学的な思想により「障害者や移民、ユダヤ人といったマイノリティへの差別や排除、抹殺」を繰り返してきた。日本では「ハンセン病患者の隔離政策」がその典型といえる。
現代的な優生学の広がりに大きく寄与しているのが「科学の進歩」や「経済の低迷」、そして「新型コロナウイルスの感染拡大」である。優生学の現代的な脅威を論じる。


商品情報

書名(カナ)ゲンダイユウセイガクノキョウイ
判型新書判
ページ数208ページ
ジャンル科学・技術
ISBN978-4-7976-8069-0
Cコード0245

著者略歴

池田清彦(いけだ・きよひこ)

生物学者、評論家。早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。1947年、東京都生まれ。構造主義を生物学に当てはめた「構造主義生物学」を提唱。その視点を用いた科学論、社会評論なども行っている。『「進化論」を書き換える』(新潮文庫)、『進化論の最前線』(インターナショナル新書)、『本当のことを言ってはいけない』(角川新書)、『自粛バカ』(宝島社新書)など著作多数。

目次

はじめに
相模原知的障害者施設殺傷事件/科学が優生学に与えた影響/病気が不安を呼び、不安が差別を生む

第一章 甦る優生学
大量殺人犯が信じた「革命」/積極的優生学と消極的優生学/マルティン・ニーメラーの言葉/「神聖な義務」論争/優生学が現代に甦りつつある

第二章 優生学はどこから来たのか
近代優生学の祖、ゴルトン/ダーウィン進化論の誤用/科学が優生学にお墨付きを与えた二〇世紀/アメリカの優生運動/ジョンソン・リード移民法

第三章 ナチス・ドイツの優生政策
優生学と人種主義の融合/ドイツにおける優生学の始まり/ナチス前夜に実現していた優生政策/T4作戦/ナチス・ドイツと現代日本の類似点

第四章 日本人と優生学
日本の優生学の源流/日本における「進化論の父」/「国民優生法」の成立/「命の選別」を求める空気/ハンセン病患者の隔離・断種政策/らい予防法の成立

第五章 無邪気な「安楽死政策」待望論
「安楽死」と「尊厳死」はどこが違うのか/活発化する尊厳死法制化議論/安楽死・尊厳死を認めるべきなのか/「生きる権利」がないがしろにされる社会

第六章 能力や性格は遺伝で決まるのか
知能はどれほど遺伝するのか/深い議論なく進む「命の選別」/行動遺伝学/遺伝子で人間の資質は決まらない/ゲノム編集の問題点/エンハンスメントと優生学

第七章 “アフター・コロナ”時代の優生学
浮き彫りになった「健康格差」/重篤化するコロナウイルスの性質/人獣共通感染症(ズーノーシス)/一方的な「正義」/チフスのメアリー/生権力

あとがき

担当編集者より

池田清彦先生の新書を担当するのは、今回の『「現代優生学」の脅威』で2冊目です。インターナショナル新書の創刊時に『進化論の最前線』を担当し、その縁もあって、このたび「優生学」の現代的な現れ方について論じていただきました。
知的障害者施設45人殺傷事件や、国会議員による「生産性」発言など、現在「価値ある命」と「価値のない命」を区別するような優生学的な思想が、社会の隅々に浸透しつつあります。そうした感想を池田先生にお話ししたところ、先生は優生学の歴史を最先端の生物学研究を交えながら教えてくれました。あまりにも興味深い内容だったので、すぐに雑誌『kotoba』(集英社)での連載と、新書化をお願いしたくらいです。
古今東西の浩瀚な書物に目を通し、膨大な知識をもつ池田先生の原稿には、「なぜ、優生学的な思想はなくならないのか」が論理的に書かれていて、ただただ驚かされるばかりでした。本書では優生学の現代的な問題点を明らかにしながら、ゲノム編集や行動遺伝学、新型コロナウイルスなど最先端の生物学研究を解説しています。ぜひお手にとってみてください。

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