「最愛の人」を詠む短歌募集企画 受賞作品発表
インターナショナル新書『寄り添う言葉』の刊行を記念して開催しました「最愛の人」を詠んだ短歌募集企画につきまして、この度、合計717名2385首(WEB 579名2117首、ハガキ138名278首)の応募がございました。
多くの方にご応募いただき、誠にありがとうございます。
永田和宏氏によって選考が行われ、下記のとおり受賞作品が決まりましたので、発表いたします。
●永田和宏氏より総評
『寄り添う言葉』の刊行記念として、「最愛の人に贈る短歌」を募集したところ、予想外に多くの投稿をいただき、驚くとともに、その対象は誰であれ、自らが愛する人に届けたい言葉を、これだけ多くの人が持っているのだということを実感し、うれしくも、また頼もしくも感じたことだった。多くの優れた歌を発見することができ、初め編集部は三首の優れた歌を発表する予定でいたのだが、どうしても多くの人の目に触れてほしい歌が多く、入選、佳作として、合計二〇首の歌を発表することになった。選者として、たいへんうれしく思うところである。
●最優秀賞
まっ先に君に抱きつく犬と子ら一番最後抱きつくわたし
青い鳥 さん
(評)羨ましいような光景である。夫が帰ってきた。跳んで行って抱きしめたいが、「まっ先に君に抱きつく」のは、犬と子供たち。作者は一歩譲ってそれらを楽しく見つめ、さて、「一番最後に」抱きつくというのである。自分だけでなく、家族全員が君の帰りを待っている。君が帰ってきて初めて、家族が家族となるという安心。作者の余裕のある視線と、結句の思い切った表現が魅力的な一首である。
●優秀賞
喪主の座の妻を見おろし何思うかっこつけたる遺影の夫は
安威道子 さん
(評)夫の葬儀の場である。喪主という、なりたくない役割をなんとかこなしている私を、遺影の夫が見下ろしている。「かっこつけたる遺影の夫」という表現には、さっさと先に死んでしまった夫へ文句の一つも言ってみたいという気分がうまく表現されている。
傍らに座りてをればやがて覚めごめんねそう来んでもええと言ふ
前川泰信 さん
(評)施設に入って生活している母であろう。訪ねて行くと、眠っていた。しばらくその傍らに座っていたら、やがて目を覚ました母の言葉が「ごめんね」、そんなに度々「こんでもええ」よ、というものだった。母の気の使い方を悲しくも思い、その母に何もしてやれない自分をまた申し訳ないとも思ったのだろう。
●入選
顔合わす暇ない日でも知ってるよ あなたが寝顔を見に来てること
げんきいっぱい さん
君と二人何も怖くもなかった日残金二十円そんな旅でも
紅谷恵子 さん
君に会う以前と君に会ってからたった二章で終わる世界史
庄野酢飯 さん
お母さんと一緒やったらなあと父しかたなかたいおらんとやけん
岩永芳人 さん
私には涙をみせずに逝った夫 娘は一度みたのだという
波多野茂美 さん
強風の平久保灯台君の声携帯の感度高まるを待つ
わたぬき こう さん
生前の悪事はすべてないことにしてあげるから帰って来てよ
松岡郁子 さん
●佳作
「ありがとう、言える間に言っておく」と 十日後逝きし夫は律儀に
中嶋明美 さん
泣けるだけ泣けば良かった父の死は茫然と立つ夫逝きし今
田口黎子 さん
あなたとか君とかそんなよびかたは一切似合わないような人なのに
松尾芽生 さん
あなたには一生わたしをあまやかすそんな権利をあげるから
遠山さくら さん
ほら一杯今ならすぐにコップ出すどうしてあの日断ったのか
タロー41号 さん
水面に映ったあなたはどことなく わたしに似ていて似てきたらしい
堀将大 さん
選ばれるような恋ならしてないし雨の日が好きなんて言わない
菅本勇馬 さん
留守電の声は色褪せないままで春の驟雨のようにやさしい
大野博司 さん
「ただいま」の微妙なトーン聞き分けてそっと出てくる桃の缶詰
ベンジャミン さん
よくできた反面教師と称えてはオヤジのために酒、煙草のむ
但馬きい さん
最優秀賞・優秀賞の皆様には賞品の図書カードを贈呈いたします。