「自炊」を考える(その2)

電子出版の急激な普及とともに、今、愛書家、読書家のあいだで注目を集めている「自炊」、すなわち、自分の所有する本を解体して、それをスキャナーにかけて電子化してしまう。つまり自分一人のための電子書籍を作るというのが「自炊」というわけなのですが、この自炊、本当に蔵書整理の最終兵器になるのでしょうか。

私はそれに対して、少々、疑問を感じています。

たとえばちょっと前にレコードからCDへの移行が起きました。そのときに、どれだけの人が「貴重なレコードコレクション」をデジタル化しましたか?

愛着のあるレコードはたくさんあって、それは捨てるには忍びない。かといって、アナログ・プレイヤーもいずれはなくなるから、そのままでは死蔵になってしまう。やはりここはデジタル化して保管しておくのがいいのではないか──そのように考えた人は多数いました。しかし、それを実践した人はどれだけいたでしょうか。

あるいは(これは私自身の経験ですが)、子どもの成長記録などホームビデオはどこの家庭にもたくさんありますが、VHSやあるいは8ミリビデオなどのアナログ機器で録画されたデータ、頭が痛いですよね。

このままでは昔の8ミリフィルムと同じで、死蔵されてしまうことになるから、今のうちにデジタル化したほうがいいんじゃないか──そのように考えているパパやママはいっぱいいます。

でも、それをやり通した人はどれだけいるでしょうか。

少なくとも私は途中の10本くらいで諦めました

(だって100本近くあるんですよ! それも素人ビデオだから改めて見るに堪えないようなグダグダの内容の・・・)。

さて、私が何を言いたいか、もうお分かりでしょう。

そうです! 素人の情報整理、蔵書整理なんか数が少なければ何とかなりますが、100冊でも超えればもうそれは無理!

整理していくそばから本が増えていきますからやる気がなくなる! 自炊だって、じきにやらなくなりますよ。

そもそも、自炊すると簡単に言いますが、自炊してファイルができたらそのファイルに共通したタグを付けていかないと、あとから検索できません。このタグ付けがまことに時間がかかる。タイトル、サブタイトル、著者名、出版社……これだけを入れていくのでも、けっこう面倒です。

音楽ソフトのiTunesなどが偉大なのは、取り込んだ音楽データをソフトが自動的にタグ付けをしてくれるところです。

CDをPCに入れれば、自動的に保存して、タグをつけて、しかもアルバムカバーまでダウンロードしてくれるところ。これがあるから、私たちは気軽にどんどんCDを取り込んで愉しめるんです。

もし、これがアルバムの一曲ごとに曲名やアーティスト名を入れていくのであれば、ここまでiPodなどが普及しなかったはず。

本の整理もこのくらい楽にならないとダメだと私は思います。

今の自炊は残念ながら、そのレベルではありません。

本のスキャンは自動に出来ても、表紙カバーのスキャンはどうするのか、帯はどうするのか。さらに本の書誌データはどの程度入れるべきか、ISBNはどうするか、人間様が考えなければいけないことが多すぎます。

さらに経験があるでしょうけれど、人間というのはそういう整理作業を機械的にこなせない。

本を手にとって読みふけったり、あるいはスキャン結果が何となく気に入らなくて何度もやり直す、さらには「この本は断裁するには忍びないから、置き場所を考えよう」など、余計な作業をしてしまします。本が好きだからこそ、ついついそんな「蟻地獄」に陥ってしまうのです。

もし、あなたが自分の蔵書をそのように整理しようと思ったら、一人でやり通すのは大変です。

いちばんいいのはあなたの蔵書に対して、個人的な感情を抱いていない第三者、つまり秘書や司書さんにお願いして、「あとは任せる」と言うこと。それならば長続きします(お金の続くかぎり、ですが)。

こうやって考えてみると、やはり自炊はお薦めできません。

スキャナーだって断裁器だって安くないし、何よりあなたの時間ほど貴重なものはない! そんな単調な作業のために、あなたの読書時間を費やすのに耐えられますか? 本を読んでいるほうが、自炊よりも100倍、1000倍楽しいですよ!

(続く)

(MKT記す)