『柔らかな海峡 日本・韓国 和解への道』刊行のお知らせ②

<たけしさんと数式と論理展開の美しい関係>

北野武(ビートたけし)さんに、「嘲笑」という詩があります。

太古からそこにある星と、おそらく恋人だろう人への気持ちを重ね合わせて、「ぼくらが昔見た星と ぼくらが今見る星と なんにも変わりがない それがうれしい」と、のびのびとした時間の流れにナイーブな気持ちがからみあう、ストレートでシンプルでナイーブ、たけしさんらしさの3拍子がそろった、好ましい気持ちがぐいぐいと伝わってくる詩です。

この詩には、同じ「嘲笑」というタイトルの、元になった詩があります。やはり星への思いを書いたその詩も、たけしさんらしい「ぶっきらぼうな深さ」がシンプルな言葉で書かれていて、読んでいて気分がよくなる詩です。

この元になった詩を読んだ玉置浩二さんが曲をつけることで、もう一つの「嘲笑」という詩が生まれ、いろんなミュージシャンが歌っています。この詩のことは、以前北野武さんの本を一緒に作った友人の編集者が教えてくれました。

その友人とビールを飲みながらこの詩のことを話していた時、彼は「この詩の中の彼は、自分が彼女に迷惑をかけてしまうような人間だということをわかっているから、口にできない彼女への想いを星への気持ちに託したんだと思う。」と言いました。そうであれば、それもたけしさんらしいとぼくは思い、そして、そうであればいいと思い、シンプルでストレートなこの詩を、美しいと思ったのです。

北野武監督の激しい映像の底には、静かで深い人間への思いがあります。
ぶっきらぼうな詩の言葉の端っこにも、同じ思いが見え隠れしています。
「美しい」とは、そういうことです。

11月26日(木)に発売される、金惠京(キム・ヘギョン)著『柔らかな海峡 日本・韓国 和解への道』のカバー帯に、「世界で一番美しい評論集」という言葉があります。担当編集者のぼくが書きました。この「美しい評論集」の「美しい」とは、どういう意味なのでしょうか。本書のプロローグに、次のような一節があります。

「ある意味で、私の日本への思いは一つの物語なのかもしれない。当初は少女の初恋のように、話したこともない人に憧れを抱くのに似た思いだったが、そこで暮らしていく内に、大変な思いを経験しつつも、共に歩むために言葉を紡ぐようになった。今、私が望んでいるのは、韓国をはじめ各国にいる若者たちが、昔の私のような憧れを持つ日本であって欲しいということである。日本が忘れかけている姿を取り戻し、各国と柔らかな関係を取り結ぶ場所となるよう、私も心を尽くしていきたい。」

硬質な世界の状況を読み解く著者の言葉と論理展開は、理想で裏打ちされ、底流には、それぞれの国に住む人たちへの思いが流れている。「美しい」とは、そういうことです。

政治や社会を語る言葉に、理想がなくていいはずがありません。理想を「きれいごと」という一言で片隅に追いやり、憎しみを増幅させる発言や居丈高な言葉を「面白い」と言う、そんな「面白さ」がもてはやされていいはずがありません。

この本はそうではないから、美しい。

著者・金惠京さんの知人である数学者が、『柔らかな海峡』の書評を書いてくださるそうです。難問を解いた数式はとても美しいといいます。同じことが人の書く文章にも言えます。たとえば『柔らかな海峡』の中の「世界遺産登録を真の価値あるものとする方法」という章を読む時、緻密な論理展開で書かれたそれは、まるで美しい方程式を読んでいるような印象を受けます。その数学者は、著者の論理展開の美しさに、数式の美しさと通じるものを感じたのかもしれません。

カバーの帯には「新鮮で感動的な23の提言」という言葉もあります。「新鮮な提言」とは、どういう意味なのでしょうか。その説明をすることは、著者の金惠京さんの日韓問題を読み解く立場を説明することにもつながります。詳しくは、またこのブログで書くことにします。ぜひお読みください。

著者の金惠京さんが、11月25日(水) に文化放送 「くにまるジャパン」に出演し(10時~10時20分頃)、『柔らかな海峡』について、たっぷりと話します。また、本でイスラム国についても触れていますので、先日のパリでのテロについても本との関連で話す予定です。 Tune & Listen!!

担当編集 日野義則

11月26日(木)発売
『柔らかな海峡 日本・韓国 和解への道』金惠京・著
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