『柔らかな海峡 日本・韓国 和解への道』刊行のお知らせ③

<ラーメン屋の日韓論>

まだ夏だった頃の週末のある日、こんなことがありました。11月26日(木)発売の『柔らかな海峡 日本・韓国 和解への道』の著者の金惠京(キム・ヘギョン)さんから新たに送られてきた原稿を図書館で読み込んで家に帰る途中、寄ったラーメン屋のカウンターでビールを飲んでいると、隣の女性客二人が話していました。

「嫌いなタイプなのに好きになって、好きなタイプなのに嫌いになるって、あるよね。」「あるある。迷惑をかけられたのに好きで、迷惑をかけられてないのに好きじゃないってあるよね。」「迷惑かけるやつって、結構いいやつがいるよね。いいやつってのが全部を覆い隠してるから、まあいいかな。」

感情の不可逆性。『柔らかな海峡』の原稿を読み込むことで一日が過ぎた週末の夜、二人の会話を聞いていて、日本と韓国、日本とアメリカもそうだなと思いました。

日本で「韓流」という言葉が一般的になり、ドラマや音楽が人気を集めていたのは、ついこの間のことです。李明博前大統領の竹島上陸がきっかけとなってすっかり険悪になってしまった日韓関係。その李明博前大統領のエピソードが『柔らかな海峡』に書かれています。<「いつもの光景」を超えて─竹島(独島)を相互理解の契機に>という章の中に次のような一節があります。

〈私の中には李大統領の行動に対して強い違和感があった。というのも、李大統領の息子と私の弟は小学校以来の幼なじみで、現在まで家族ぐるみの付き合いが続き、普段の“李君のお父さん”の思いが良く分かっているためである。

もう20年ほど前になるが、私が高校時代、日本の大学への留学を考えていた際、自分が大阪で生まれたことや国際的なビジネスでの経験(1992年に政治家となるまで、李明博氏は実業家として知られていた)を踏まえ、「日本だからこそ学べることも多い。これからの韓国を担う世代のあなたは、是非留学するべきだ」とアドバイスをくれたこともあった。〉

このエピソードで書かれたような考えを持つ李明博前大統領の中にもある、感情と行動の不可逆性。人と人との感情は複雑です。でも、国と国との関係も同じ程度には複雑です。国は人と人とが作っているのだから。ラーメン屋の隣にいた二人の会話は、どんな人にも国にも内包されているのです。そして二人の会話は、こじれた関係が何かがきっかけで好転する可能性も示唆しています。

『柔らかな海峡』のカバーの帯に、「新鮮で感動的な23の提言」という言葉があります。「新鮮」という言葉は、著者の金惠京さんの日韓関係を読み解く「複眼と楕円の思想」の新鮮さを意味しています。

感情と歴史が複雑に絡み合う険悪な日韓関係を読み解くには、複眼的なものの見方と、中心が二つある楕円の思考が必要です。でも、そういう複眼と楕円で語られる言葉には、なかなか出会えない。どちらかの立場で日韓問題が語られることが多い中で、著者は生まれ育った韓国、あこがれから留学し学問の体系を身に付けた日本、そしてアメリカでの活動。三つの視点から日韓問題を読み解いています。どの立場にも片寄っていない。片寄っているとすればそれは「金惠京という立場」にだけ。その立場がとても新鮮です。

作家の佐藤優さんも著者のその立場を評価して、「金惠京氏の評論が優れているのは、韓国、日本、国際社会という3つの視座に立つからだ。」という推薦の言葉を寄せてくださいました。

韓国、日本、アメリカ、三つの視点から読み解かれる日韓関係は、とても新鮮です。新鮮で感動的な日韓論をぜひお読みください。

著者の金惠京さんが、11月29日(日) 午前0時~<28日(土)深夜> のNHK Eテレ「ニッポンのジレンマ」に出演します。「僕らのアジア大研究」をテーマに、アジアの中で日本を(また日本がアジアを)どう捉えるべきかについて話し合います。同世代の方たちと語り合う著者の「複眼と楕円の思想」に触れることのできる絶好の機会。Tune & Watch Together!!

担当編集 日野義則
 

11月26日(木)発売
『柔らかな海峡 日本・韓国 和解への道』金惠京・著
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