『犬と、走る』発売記念レポート 〜第2回「涙ぞおつる」後編〜

〈前回のつづき〉

 第2回 :「涙ぞおつる」後編 

 ”「カナダに行っても、うまくいかなかったら? 今はいいとしても将来はどうなる?」という不安がなかったと言ったら嘘になる”(『犬と、走る』P.25)

それでも前に進むこと。
熟考とは違う彼女なりの「計算」で実行に移すこと。
なんとかなるという自信を心で感じて、心に従い、心を貫き通すこと。

本多さんと、本多さんの活躍を撮り続けている佐藤日出夫さんへ花束が贈られるシーンでは、みなさんのスピーチに耳を傾けても、唐突に話を振られても、気がつくとビールを求めて手を伸ばしている本多さん。やはりブレません。

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そのしたたかさに、きっと人は心打たれて、気がついたら彼女に夢中。

もはやこうしてはいられない。したいことをしよう。そのしたたかな選択を今こそ!私も!

「申し訳ない。うちのYが本多さんと一緒に写真撮ってほしいそうなんだけど」

T編集長にお願いして、撮る側から撮られる側へ!
レッツ! 記念写真! 職権濫YO!

そしてカメラに向かってなぜだかファイティングポーズをしていたそのとき、私は見てしまいました。

本多有香さんの手を。
年輪を重ねた大樹のように厚く、硬くなったその皮膚を。
何かをずっと握りしめ続けた、その証がそこにはくっきりと残っていたのです。

彼女の文章にあった一節が頭をよぎります。
自分の犬舎を持ちたい本多さんが知り合いから格安で土地を借りたときの話。
条件は一つ。それは自分で土地を開拓すること。

 “長い年月を生きてきた木をあっという間にブルドーザーで切り倒してしまうのは少し寂しい。それよりも、こうして1本ずつの木と1対1で向き合って切っていくことで、時間はかかるがその木と私の間に共通の思い出ができる。(中略)苦労した分、どこにどの木があったのか、私はずっと覚えていられる。”
(『犬と、走る』P.224)

本多さんはまさにその手一つで、あらゆる困難を乗り越えてきたのだと再実感。

したたかさを文字通り体現しているその手は、そりの取っ手を強く握りしめます。26匹の大家族をその手でときにそっと包み込み、ときに守る。

だから、「ファイティングポーズ」。(拳が爽やかな笑顔とともに私に向けられていたことはさておいて)

不言実行が好きだという本多有香さんの生き様がその手にしっかりと刻まれているのを見て、私は胸が熱くなりました。

かさねぎに 涙ぞおつる したたかさ
薪のぬくもり だけではなくに

衣服を着込んで、一つ一つの思い出を心に刻みこみながら、一本一本木を切っては重ねていくあなたの横で感じるぬくもりは、決して暖炉のぬくもりによるものだけではないのでしょう。

歩んできた人生が、生き方が、身体中からあふれ、やがて空気に溶け込んでいく。そんな人に私もなりたい。
そんなことを思いながら、ぱしゃり camera.gif

残念ながら、私の携帯カメラでは秒単位で躍動する本多さんの姿を捉えることはできませんでした。
後日、スーパーウルトラお願いして、再チャレンジさせていただきました。
(職権濫YOその2)

その後、会場の熱気冷めやらぬまま、会はひとまずお開きに。

「今回のコンセプトは、スタッフも全員呑みながらやろうって感じです」

パーティの幹事・大西夏奈子さんから言われた任務を忠実に遂行しました。

ほろ酔いながらもビール大好き本多さんの本領を間近で見ることができ、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。

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<まとめ>
実際の本多有香さんはご自身の著書から伝わる印象通り、まっすぐで本当に素敵な方でした。

そんな本多さんから、私はおそらくとても大事であろうあることを学ばせて頂きました。

それは無駄な計算の不要さ。

今の時代、知りたい情報は大概インターネットを通じて入手できます。
本当に多くのことを知ることができます。

例えば将来の夢について検索すると、いろんな職業についた方々の姿がネット上にはあふれています。
やりがいとか、苦労した話。
そういうのを眺めていると、想像ばっかりが膨らんで、気づいたら尻込みしている私がいます。

本多さんをはじめ、パソコンのディスプレイ上で目を輝かせている方々のほとんどが、先の見えない世界に飛び込んで努力した人たちばかり。

一方、この世界で全く同じ生き方をしている人は誰一人としていないという当たり前の事実をないがしろに、情報に埋もれて足がすくんでいる私。

そんな私に本多さんは、夢を叶えるためのどれだけ無意味な計算が世界にはあふれているのかを教えてくれました。

なんとかなるかもしれないという自信と、若いうちは失敗してもやり直せるだろうという計算。

それだけで足を踏み出すには十分なのだと。

もちろん簡単なことではありません。

途中で投げ出したくなることもあるかもしれません。

けれど犬たちと共に、一つの目標を成し遂げた人がいます。

犬ぞりは、まさに本多さんの人生。後退はないのです。

本多有香さん。あなたは私の目標です。
本当にどうもありがとうございました。

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マッシャー(犬ぞり師)として生きることを決意した彼女がどのような人に出会い、何を感じたのか。
また、どのような困難に直面し、それをどう乗り越えたのか。
波瀾万丈という言葉が、とても美しく心に響く一冊です。

ぜひ、書店でお手にとっていただけたら幸いです。

新人Y