おくらが深い! ―『くらもち花伝』番外編3

くらもちふさこさん初の自伝&秘伝の書『くらもち花伝 メガネさんのひとりごと』好評発売中!
番外編につづき、本書に掲載できなかったコンテンツを紹介します。
くらもち花伝HP
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『ふつーですよ&サンシャイン水族館』
『千花ちゃんちはふつう』のラストシーンは、まったく普通ではない千花ちゃん一家が集合して記念写真を撮影し、カイが「ふつーですよ」と言って終わる。次の長編『海の天辺』も、最初に4巻分の表紙イラスト(サンシャイン水族館)を描きおろし、分割して使用するというアクロバティックな装丁で、4巻目のラストに、河野がカバードンピシャの構図でプロポーズする。
まるで最初からすべて「想定通り」と言わんばかりの見事な展開ですが、実は、最初からエンディングを決めていた訳ではなく、物語の終わりが近づいて来ると「アレ、使えるか?」と思いはじめるんだそう。くらもち先生曰く「神様が最後働きはじめるんです」とのこと。
『線路を渡る、薬を受け取る』
くらもち先生にとって描くことは「記憶の保存」でもあるそうで、作中のエピソードには先生ご自身の印象的な体験がちりばめられています。
例えば『天然コケッコー』ではそよたちが丘を越え、線路を越えて海に向かうシーン、大沢が町まで母親のぜんそくの薬をもらいに行くシーン、それぞれがくらもち先生ご自身のちいさな思い出なんですって。
『君を好きになりました』
『駅から5分』で、雛に片思いする櫻井が意を決して告白する「episode17」は、雑誌掲載時と単行本で大幅に構成と構図が変更されています。くらもち先生曰く「雑誌になってから読んだら、インパクトに欠ける?と思い……その時浮かんだのが修正後の構図です。全体的に雛の冷たさが増しています。単行本になる際に大きく変えるのは、ホントは掟破りなのですが……描いている時はまったく気づかず、本になると見えてくることがあるのです……」とのこと。
こうした修正以外にも、文庫版でさりげなくエピソードが加えられている『天然コケッコー』や、コミックスと文庫で収録順が異なる『α』『+α』など、くらもち作品ではバージョンごとに宝探し気分で違いを楽しむという遊びも可能です。
『プッパプッパパッ…』(吹奏楽部が演奏する音)
『駅から5分』のepisode18(3巻最終話)では、それまでのepisodeで登場した人々の声や音(+ちょっとした謎解き)が、ひとつのシーンの中にさまざまな書体で登場します。これ実は『花に染む』の巻末に収録されている方の「駅から5分 Last episode」で使おうと思っていたアイデアでもあったそう。
Last episodeを描く際に「アッ!(使ってしまった)」と思ったくらもち先生は、新たな表現でキャラクターたちが交錯するエンディングを編み出しています。
(文=花田身知子)