おくらが深い! ―『くらもち花伝』番外編2

漫画家・くらもちふさこさん初の自伝&秘伝の書『くらもち花伝 メガネさんのひとりごと』好評発売中です!
前回につづき、『くらもち花伝』番外編、どうぞお楽しみください。
くらもち花伝HP
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『麻子はシチューが得意ですのお母さん』
『いつもポケットにショパン』で、麻子の母・愛子は、ピアノの公開レッスンで「キャベツのせんぎりをおもいだして」と女の子に指導します。彼女の母親は、包丁を使って指にけがをしたら……と言いますが、愛子は「皆とわかりあうためには皆と同じ生活が必要です」と説きます。
そこで登場するのが 「麻子はシチューが得意です」 という名言。今まで甘やかされなかったのは、母の娘に対する愛情だと気づき、麻子は母親に対するわだかまりが急速に溶けていきます。
ちなみにこの「シチューが得意です」と説明する時のお母様の極上の笑顔は、くらもち先生曰く「むしろ、よそゆきの顔」というイメージだそう。愛子はそれまでわざと麻子に冷たく当たっていたわけではなく、家族だから遠慮がないだけ。麻子のお母さんだけあって、ちょっと不器用なところもあるのだとか。麻子自身も、近しい関係の相手にこそ喜怒哀楽の感情を素直にぶつけています。ホントの親子って、そんなもんですよね。
『代官山の街並みとピアノ』
『いつもポケットにショパン』で、麻子と季晋がピアノ教室に通う情景は、くらもち先生が小学2年生で駒込に移る前の社宅のアパートがあった代官山付近の街並み。先生が住んでいたアパートの裏手は、電電公社があったことをよく覚えているそう。麻子のように、くらもち先生自身も幼い頃はお母さまに連れられ、銀座までピアノを習いに行っていたそう。
ちなみにピアノは、高校3年生で大学受験が忙しくなるまで続けていたという。ピアノが大好きだったことがうかがわれます。
『洋式トイレとセルロイドのドア』
本書にも記載されている通り、小さい頃からトイレで思いを巡らせるクセがあったというくらもち先生。当時の想像が元になって、短編『セルロイドのドア』が誕生します。
この「トイレで色々考えるクセ」は、小学2年生で引っ越した駒込のアパートで出会う「洋式トイレ」がきっかけ。当時、洋式トイレは非常にめずらしい存在だったそうで、最初はどう使うのか戸惑ったという(当時8歳)。でも慣れるとヒジョーにラクちん。その自由さから、想像が広がり、まんがの糧になっていったのだとすると……設計者の方に感謝しなければなりませんね。
(文=花田身知子)
・おくらが深い! ―『くらもち花伝』番外編1