
風を起こすと期待された日本維新の会も衆院選で振るわず、今はただ漂流しているかのように見えます。なぜ風は吹かなかったのでしょうか。
昨年、維新から出馬して衆議院議員となった中田宏氏は、彼が横浜市長、橋下徹氏がちょうど大阪府知事になった時代から連絡を取り合い、橋下氏を陰で支えてきました。
その中田氏に約2年半にわたり同行取材したノンフィクション作家の田崎健太氏が、間近で見てきた“維新”の内実を本書で明かしています。田崎氏は、一昨年刊行した勝新太郎の伝記『偶然完全』(講談社)でも注目を浴びました。彼の取材方法のモットーは、相手の懐に入ること。そのため、通常では知り得ないエピソードが満載です。
<演説の後、中田は橋下、幹事長の松井一郎、政調会長の浅田たちと食事をすることになった。
ポスターに記すキャッチフレーズを巡って、皆が意見を出し合っていた。告示に向けて、組織が一体となっていく高揚感があった。その様子を見ながら、中田は羨ましさを感じた。(中略)
中田は「もう一つの首都」というのはどうだろうと提案した。なるほどと皆が頷いた。
「もう一つの首都というと、学者がケチをつけてくるかもしれませんね。首都は一つしかないと。だから、もう一つの首都機能というのはどうでしょう」
橋下が話をまとめた。>(第四章 大阪で圧倒的な力)
<中田は心地良い酔いを感じていた。橋下たちと別れた後、中田は妻の詠子に電話を掛けた。
「この二日間で橋下さんがぼくのことをかなり信頼していることがわかった。これはもう彼と心中するくらいのつもりでやらないといけないと思った(中略)」
しかし、純情なところのある中田と違って、橋下は一筋縄ではいかなかった――。>(第六章 国政に向けての動き)
<三〇〇人近い候補者を松井一郎一人が対応するのは物理的にも無理がある。組織として審査できる体制に変えるべきだと中田は考えていた。しかし、「それについては松井さんのところで一本化します」という返事だった。
橋下は維新の会の組織構成に問題があると感じていないようだった。これは大阪の特色が深く関わっているのかもしれない。一般的に大阪の人間は即興を重んじる。そして東京のように整然と物事を進めていくことを馬鹿にしている節がある。混沌として、適当なところが面白い。>(第八章 大阪的な体質)
まるで自分がその場に居合わせているかのような臨場感。田崎氏は、読者をグイグイと引っ張っていく筆力で、政治の世界を“身近に感じられる読み物”として描いています。
政治に興味のある人はもちろん、これまで無関心だった人も、ぜひ本書を手にとってご一読いただければと思います。
『維新漂流 中田宏は何を見たのか』、5月24日(金)発売です。
(しかし、何というタイミング!)
担当:ま