世の中では「編集者」というと、新聞、雑誌やテレビをくまなくチェックして、新しい才能を持った人が見つけたらすかさずキャッチするアンテナを持った情報通、というイメージをお持ちの方が多いように思います。
おそらくこのブログをお読みの方の中にも、そうした印象を抱いている方があるかもしれません。
しかし、実のところを言うと書籍の企画というのは編集者の頭の中で作られるものよりも、むしろ人との出会いの中で自然にできてくるもののほうが圧倒的に多いのです。
かっこよく言えば、人様とのご縁の中で単行本は生まれる──そう言ってもけっして過言ではないと思います。
さて、この7月26日に発売になる『悟りの教科書』も不思議な巡り合わせから生まれた本です。
そもそも担当Sが荒大僧正と最初にお目にかかったのは今から数年前、瀬戸内寂聴さんが青空法話をなさる天台寺でのこと。
このとき、荒先生はちょうどご自身の個展を日本各地で行なうために帰国中で、瀬戸内さんに挨拶に来られたのでした。
でも、このときは「ハワイにも天台宗のお寺があるんですね!」程度のお話しかしなかったと思うのですが、昨年の秋、ふたたび荒先生と天台寺でお会いし、そこで話が弾んで「今度は一緒に東京でお食事でもしましょう」と約束させていただきました。
それから数日後、さっそく荒先生とお会いして食事のお店に移動するタクシーの中、荒先生が携帯を取り出して「ちょっと失礼させてもらって電話を」とおっしゃいます。
そこで先生がなさっている電話の会話が聞くともなく聞いていると……
「トマベチくんはいるかい?」
「ああ、トマベチくんかい? 例の件だけれども」
ん? トマベチくん? なんか聞いたことがある名前だぞ?!
電話を終えられた荒先生に
「あの~、失礼なんですが、今、お電話をなさっていたトマベチさんというのは、失礼ですが……」
とお尋ねすると
「ん? 苫米地英人くんっていうんだが、君、知っているのかね? 脳科学とかコンピュータとかむずかしいことを研究しているらしいんだが」。
「知ってるも知らないも、今、日本で一番本を出している人ですよ。
面識はありませんが、つい先日も、にんげん出版の『スピリチュアリズム』を読んで感銘を受けたところです。
でも、その苫米地さんをなぜ先生がご存じなんですか?」
「いや、だって彼は僕の一〇年来の弟子だもの」
「えええええ!」(びっくり仰天)
天台宗ハワイ別院で長年にわたって住職を務め、アメリカ本土やオーストラリアでも仏教の普及活動を行なっておられる荒先生と、それこそ「月刊苫米地」、いや「週刊苫米地」とでも言う超ハイペースで本を出されている苫米地さんとの対談というと、いかにも奇をてらった企画のように思えるかもしれません。
しかし、実はこういう深い縁と、ちょっとした偶然(というか担当Sの図々しさ)から生まれたものだったのです。
仏教の本だから言うのではないですが、この世の中は本当に不思議な縁と絆で作られているのだなぁと思ったことでした。
