『柔らかな海峡』本日発売。海峡の前に立つ、彼と彼女とあなたに!! 読んでほしい本です。

<海峡という思想>

物語のある表紙にしたい。

本日発売された、金惠京(キム・ヘギョン)著『柔らかな海峡 日本・韓国 和解への道』の表紙について具体的に考え始めた時から、ずっとそう思っていました。

この本の主なテーマは、こじれきった日韓関係。国際法学者の金惠京さんが、両国が和解に向かうための補助線を提言しています。すらすらと読みとばせたり、笑えたり、そういうジャンルの本ではありません。でも、読み終えたときに希望がわいてくる本です。

どんな表紙なら、書店の棚の前に立つ人たちの背中をぽんっと押して、この本に手を伸ばしてもらえるだろう。どうすれば、この本の内容を人に伝えることができるだろう。いろいろと考えてみました。

そして、それは物語だろうと思い至ったのです。国と国との関係も、それをつくっているのは人と人です。二つの国の間の海峡には、いろんな物語があったはず。そして、物語なら人の背中をぽんっと押す力があるはずだ。そう思いました。

この本の担当編集者の私は、写真を撮ります。自分で撮った海の写真を使おうと思いました。でも、物語のある海のイメージがどうしてもわいてこない。思いあぐねていたある夜、編集部にあったイラスト集のページをなにげなくめくっていると、ある海の絵が目に飛び込んできました。

その瞬間、この絵だ!! と強く思い、この絵を描いたイラストレーターに表紙の装画をお願いしようと決めたのです。こういう気持ちを英語で「 I was stunned !!」 と言います。スタンガンの「stun 」。ぐっときたり、しびれたり、ひとめぼれをした時に使う表現です。その後もページをめくれば、ぐっとくるイラストがあったのかもしれません。でも、私はそこでイラスト集のページを閉じました。

そのイラストレーターが、今回、物語があるすばらしいイラストを描いてくださった田口実千代さんです。

田口実千代さんと、どんな絵にするかの打ち合わせをした時に、海の話をたくさんしました。田口さんが生まれ育った、どこからでも海が見える街の話。海を見ているとほっとするということ。広々とした風景が好きだということ。私は北野武監督の『あの夏、いちばん静かな海。』の話をしました。静かな海辺の日常に深い物語がある映画。

柔らかな海峡 カバー装画

田口さんが描いてくださった絵には、いろんな物語がつまっています。砂浜になにげなく立つ二人。恋人? 友人? それとも他人? さりげない距離感。でも、彼女の体のかすかな傾きに好意のようなものも感じます。

著者の金惠京さんは、「本の世界観をとてもよく表現してくださった。」と絶賛されていました。

海峡には、たくさんの、一人一人の物語があります。

沖縄の画家、安次嶺金正(あしみね かねまさ)は、

「本土における緑の木と青い空は、静寂と安定であるが、沖縄における緑の木と青い空は期待と希望である。」

という言葉を遺しています。太平洋戦争の末期、日本で唯一激烈な地上戦が行われた沖縄は、戦争が集結した後、荒廃の極みの中で様々な分野で人々が復興に向けて活動を再開していました。

安次嶺金正は、沖縄の美術界の復興を担った画家の一人でした。だから、彼の緑の木と青い空への思いは、混乱した戦後の沖縄の表現者としての真情が伝わってきます。

海峡もそうです。時代や置かれた環境によって、その姿が変わります。静かな時代の海峡は、リゾートだったり家族や友人の行き来の場だったりするでしょう。争いの時代の海峡は、人と人とのつながりを断ち切る刃物です。

海峡には争いもあれば、希望もあります。それが海峡という思想です。
どういう海峡にするか、それは私たちしだいです。

『柔らかな海峡』をぜひお読みください。
お近くの書店にない時は、ネット書店でもご購入いただけます。

どうぞよろしくお願いいたします!!

著者の金惠京さんが、11月29日(日) 午前0時~<28日(土)深夜> のNHK Eテレ「ニッポンのジレンマ」に出演します。「僕らのアジア大研究」をテーマに、アジアの中で日本を(また日本がアジアを)どう捉えるべきかについて話し合います。同世代の方たちと語り合う著者の「海峡の思想」に触れることのできる絶好の機会。Tune & Watch Together!!

担当編集 日野義則

好評発売中!!
『柔らかな海峡 日本・韓国 和解への道』(金惠京・著)
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