
『外道クライマー』が発売になりました。
まずは、この本にお寄せいただいた二人の推薦文から。
夢枕 獏さん
「近年の山岳ノンフィクションで、
これほど面白く読んだものはない」
角幡唯介さん
「『那智の滝で逮捕』のニュースを聞き、
妙な嫉妬心と敗北感を覚えた」
小説とノンフィクション、ジャンルは違えど、冒険ものの第一人者、二人の書き手が絶賛する『外道クライマー』とは、一体どんな作品なのか?
一言で言うと、これは従来の冒険ノンフィクションとは一線を画した「冒険のポストモダン」です。
著者の宮城公博さんは、アルパインクライミングの世界では日本で十指に入る実力者であり、国内外で数多くの初登攀記録をもっています。
と同時に、数ある登山ジャンルの中で「最も野蛮で原始的な登山」と呼ばれる沢登りにこだわり続ける「沢ヤ」でもあります。
彼が自ら定義する「冒険」とは、人類初の場所やルートを行くもの。
しかも、生死ぎりぎりの境界に身を置く行為です。
宮城さんは「冒険とは何か」という問いに答えを出すべく、自らの身体を使った表現行為として山に登っているのです。
一見破天荒にも見える登山・冒険を繰り返すことで、「登山」や「冒険」という行為が本質的に持っている反社会性を浮き彫りにしていきます。
その筆致は時にシリアスに、時にユーモラスに、読者を惹きつけて止みません。
本書では、世界遺産・那智の滝を登攀しようとして逮捕されたのをきっかけに、日本や台湾、タイの前人未踏の渓谷に挑んでいきます。
日本に残された地理上の空白地帯だった称名廊下、日本を代表するアルパインクライマー佐藤裕介さんと共に冬期初登攀を成し遂げた落差日本一の称名の滝、怪物のようなゴルジュに挑んだ台湾の渓谷チャーカンシー……。
そして、「誰もやったことのない登山」をめざして行った46日間のタイのジャングル行は、道に迷い、激流に溺れかけ、飢えに耐え、大蛇と格闘する凄まじい旅でした。
登山、冒険などの興味のある方にとっては必読書とも言える『外道クライマー』、ぜひお近くの書店で手に取ってご覧下さい。
なお、宮城さんは、映画『エヴェレスト、神々の山嶺』にも山岳スタッフとして参加しました。
映画原作者の夢枕獏さんとの対談は、現在発売中の集英社クォータリー『kotoba』春号に掲載されています。
担当I.T.
