【新刊情報】ロジャー・パルバース著『もし、日本という国がなかったら』12/15発売です!

2011年12月8日

「もし、ロジャー・パルバースという人物が生まれていなかったら」

思えば、この本が生まれるきっかけになったのは、去年の春のある昼すぎのこと……。
九段下の、とある中華料理店で、ギトギトにあぶらぎった味噌ラーメンをすすり、汗だくになりながら、他の客のこぼした汁で汚れきった店内の読売新聞を読んでいたときのことです。

その「論点」という欄に載った、パルバース氏執筆の、<海外にニッポン広めよ 日本政府「富国強芸」の時>という短いコラムが目に飛びこんできました。

簡単にいえば、経済の低迷やで、閉塞状態にある日本が元気を取りもどすためには、これからは「富国強兵」ならぬ、「富国強芸」をめざすべきである。経済の礎は自国の文化にこそある。つまり、日本が世界に誇る自国の文化をもっと日本人自身が知り、それを積極的に世界にアピールしていくべき時期である、という内容でした。

このコラムがなぜかそのとき心に強く響き、その後、氏の著書を買い込んで読んでいくうちに、日本にたどり着く前もそれ以後も、氏が送った興味深い半生や、日本と日本人にのめり込んでいく過程、生まれ育ったのがアメリカなので英語はもちろん、ロシア語、次にポーランド語という世界で最も難しいといわれる言葉、ついには日本語の読み書きまでほぼ完璧にマスターし、ロシア文学から日本文学まで、その膨大な量の作品をすべて原語で読破していらっしゃることを知り、驚きました。

また、デビッド・ボウイと坂本龍一が主演した、私の大好きな映画、大島渚監督の『戦メリ』の助監督をした、という経歴にも強く惹かれ(そのご縁のおかげで、今回の本の帯に、坂本龍一氏が「推薦の言葉」を寄せてくださったのでした)、ぜひ先生の本を作ってみたい、と思ったのです。

つまり、
「もし、私が九段下のラーメン屋で、味噌ラーメンを食べてなかったら」…
この本は世に現れていなかったかもしれません(なわけありません—その一)。


原稿をお願いしようと初めてパルバース先生に会いに、勤務先である大岡山の東京工業大学へ行ったのは、今年の1月のことでした。どんな場合でもそうですが、初対面のときは、「出会い頭」が重要です。先生とお会いする直前に、私の貧弱な脳みそにあることがひらめきました。

いざ初対面、先生から真っ先に「いや〜、どうも初めまして!」と流暢な日本語でいわれたとき、ハンサムで長身、そしてダンディな人物を前に、私は少々緊張しながらも思い切ってこうあいさつしてみたのでした。
「ズドラーストヴィーチェ!」
(ちなみに、これはロシア語で「こんにちは!」という意味です。)

私がそう言ったとたん、先生は口をあんぐりと開け、目をまん丸くしてフリーズ状態になってしまったではありませんか……。

「しかしあなたは、なんでロシア語なんか知ってるんですか?」
(実はわたしは、以前ある月刊誌の編集をしていたとき、ロシアのさまざまな町や田舎へしょっちゅう取材に行っていたのがきっかけで、ちょっとロシア語をかじったことがあったのです)

きっと先生は、いきなりロシア語であいさつをする日本人(という、通常ありえない状況)に思いもかけず親近感を覚えたのでしょう。
たがいにロシアの話をひとしきりしたあとは初対面とは思えないほど打ち解けて、本書の企画の話が実にスムーズに進んでいったのでした。

してやったり! 私のささいな思いつきは、かなりの効果があったのでありました。

「もし、私が片言でも思い切ってロシア語を話していなかったら」…
企画を断られていたかもしれません…(なわけありません—その二)。

この本の企画趣旨は、前述のコラムのとおり、「世界にも希有な、すばらしい日本の文化と日本人の精神性を日本人自身が見直すことで、失った活力と自信を取り戻してもらいたい」というものでした。

そしてその後の3月11日に、あの東日本大震災が起こります。
先生は、もっとも敬愛している宮沢賢治を生んだ地でもある東北の惨状を目の当たりにして、本書執筆へのモチベーションと賢治への思いは、より強力なものになりました。


また、先生はことのほかジョークやユーモア、そして駄じゃれが大好きで、お会いするたびに(メールのやりとりでも)、AK-47カラシニコフ自動小銃のように、ジョークの連射で始まります。

本書の刊行前、打合せをかねて上司も含めて3人で食事をしているときも、先生からクイズを出されました。
「突然ですが、問題です! 料理だったらお味噌汁、おさしみ、おとうふ、食材だったら、おネギ、おイモ、おさかな。調味料だったらお酢、そしてお箸、みたいに、日本人はなんでも「お」をつけますよね。じゃあ、外国から入ってきた料理関係のカタカナ言葉で、頭に『お』がついているもの、な〜んでしょう? 私が知るかぎり、たったひとつしかありません。ただし、ノーヒントですよ!」

悔しいじゃあ〜りませんか。日本人のわれわれがその答えをわからないなんて。私と上司は、日本人のコケンに関わると感じ、必死で考え始めました。
「う〜〜ん。おハンバーグでもないし、おカレーライスでもないし、おラーメン、おスパゲティ、おキャベツ、おセロリ、ともいわないし……。う〜〜ん、なんだろう??」

先生はといえば、私たちが悩んでいる様子を尻目に、いかにも茶目っ気たっぷりに、にこにこにこにこ笑っています。
「ええと、おドレッシングでもないしなあ……」
とここまで来たとき、先生が、
「あ、それ、近い!」とひと言。
さ〜て、みなさんのなかで、おわかりになったかたはいらっしゃいますでしょうか!?(答えは最後に)

本書が無事出来上がったあと、一介の編集者としてつくづくこう考えます。

「もし、ロジャー・パルバースという人物が生まれていなかったら」。
ささいなことかもしれないけれど、ひょっとして、日本と日本人にとって大切ななにか、に私たちは気づくことがなかったかもしれません。

ちなみに、先生はすでに次の本を考えているそうです。
タイトルは、こうです。

「もし、本当に、日本という国がなかったら…」。


担当IKM

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※上のクイズの答えは……「おソース」!!

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コメント / トラックバック3件

  1. 飯田武郎 より:

    貴社出版の「もし日本という国がなかったら」は坂野訳となっていますが、その原著は何と言うタイトルでしょうか。原文(英語?)は入手可能でしょうか。原著はなんという出版社から出版されていますか。貴社から原著も出版されていますか。

  2. 担当IKM より:

    飯田式部さま

    お問い合わせ、ありがとうございます。
    本書の原文はもちろん英語でですが、純粋に本書の「原稿」として書きおろされたものなので、残念ながら、本として販売されたものはございません。
    したがいまして、原文の入手ですが、なにか公的な目的の場合でしたら、小社と著者の判断により可能性があるかと存じますが、個人的な目的の場合は不可能とお考えください。
    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

  3. 飯田武郎 より:

    集英社
    IKM様

     英語原著は出版されていないとは残念です。英語版も出版されることを切望します。
    講談社インターナショナル当たりからでも出版できないでしょうか。
     私としては英語教材として是非使ってみたいと思っています。

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