来たる9月6日(木)、集英社クオータリー「kotoba(コトバ)」2018年秋号が発売されます。
今号は、創刊8年、33号目にして初めての写真特集です。
デジタルカメラが一般化して以来、写真技術は急速に発達し、いまやスマホでも数千万画素数の写真を撮ることができます。その便利な機能のおかげで、いつでもどこでも気軽に写真を撮れるようになった反面、SNS等を通して、プロ・個人に関係なく、写真が一人歩きし、騒動が持ち上がることもあります。
現代社会は、写真のもつ「危うさ」が先鋭化しているといってもいいかもしれません。そのような状況をふまえて、今回の特集では、第一線で活躍する写真家、作家などに写真の本質にせまっていただきました。
篠山紀信、藤原新也、野町和嘉、小林紀晴、中条省平、ピーター・バラカン、永江朗、マーク・ピーターセン、広瀬隆、黒沢清などの写真家・作家の諸氏が、様々な角度から、写真を読み解いていきます。
さらに、今回の特集では、初の実用写真技術ダゲレオタイプと、坂本龍馬の重厚な肖像写真で知られる湿板写真も大きくフィーチャーしました。
特に表紙は、その湿板写真によるビートたけしさんのポートレートです。15分でたった1枚しか撮影できないという技術的な制約と、酷暑という状況の中で(詳しくは本誌で)、たけしさんは、撮影に全面的に協力してくださいました。
私自身、湿板写真というものについてこれまでまったく知らず、その複製不可能のプロセスと仕上がりには驚かされました。
また、今号は第16回開高健ノンフィクション賞の発表号でもあります。受賞作の『空をゆく巨人』の発売は11月26日ですが、今号では、一足お先に著者の川内有緒さんのインタビューを掲載します。
同作は、中国出身の世界的現代美術家・蔡国強さんと、福島県いわき市の会社経営者・志賀忠重さんとの30年にわたる交流を描く力作です。東日本大震災の翌年につくられた「いわき回廊美術館」、9万9000本の桜の木を250年かけて植樹する「いわき万本桜プロジェクト」など、日本を舞台に展開する壮大な芸術プロジェクトを川内さんが丹念に追っています。
『kotoba』秋号は、通常号より「カラーページ32ページ増」で写真の世界にせまります。ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。
「kotoba」編集長 佐藤信夫