11月26日(水)に『日本人の英語はなぜ間違うのか?』が発売になります。
見本も無事到着しました
著者のマーク・ピーターセンさんは、これまで、『日本人の英語』などのベストセラーを何冊も出してきましたが、今回の著書はひと味違います。
「英語の教科書に間違いがある」
と聞いたら、みなさんはどう思うでしょうか?
もちろん、「日本人は英語を始める年齢が遅い」「英語の教え方に問題がある」「ネイティヴ・スピーカーに習わないと英語は上達しない」というような話は、嫌というほど耳にしてきたでしょう。
しかし、「教科書が間違っていた」なんて話は、びっくりしませんか?
私は、なんだか、ずっとダマされてきたような気になってしまいます。
本書では、中学校の英語教科書に掲載された英語と、大学教授である著者が日常接している大学生の書く「奇妙な英語」の共通点を比較し、問題点をわかりやすく解説します。
使われている例文の多くは中学校レベルの英語ですから、興味がある人なら辞書なしでスラスラ読めます。
読み終えたときには、英語に対する認識がちょっと変わっているはずです。
今、小学校での早期英語学習の必要性が叫ばれていますが、「英語を学ぶこと」について、「もう少し何かできることが他にあるのではないか?」と、担当していてあらためて考えさせられる1冊でした。
ぜひ、手にとって読んでみてほしいと思います。
発売を、お楽しみに。
担当NBO
<刊行記念イベント開催!>
※2014年12月3日(水)19:00~マーク・ピーターセンさんライブトーク@ふらっとすぽっと!『日本人の英語はなぜ間違うのか?』
マーク・ピーターセン著『日本人の英語はなぜ間違うのか?』を読ませていただきました。ピーターセン氏の著書には教職に就いている者からすれば,いつもなるほどと思う箇所がたくさんあり,参考にしています。
今回の著書に疑問の箇所があり,回答が頂けるとありがたいです。
p. 10 ~ p. 16 の
If bombs hit the zoo, dangerous animals will get away and harm the people of Tokyo.
という英文を,最終的に
If bombs hit the zoo, dangerous animals might have got away and hurt people.
と添削しています。
疑問点は,will get awayをなぜmight have got awayにしているかということです。
過去のことなので,willをwouldに,さらにmightの方がいいということはわかります。しかし,「爆弾が動物園を直撃すれば,危険な動物たちが逃げ出して,東京に住む人々に危害を加えてしまう」という意味なので,mightの後をhave got awayと完了形にしないで,get awayとしてはいけないのでしょうか。
爆弾が直撃して,檻が壊れた後逃げ出すのでget awayではないかと思うのですが。
白岡政幸様
お問い合わせの件ですが、著者のマーク・ピーターセン先生から以下のような回答をいただきました。
If bombs hit the zoo, dangerous animals might have got away and hurt people.
の意味は「もし爆弾が動物園を直撃していたら、危険な動物が逃げ出し、人に危害を加えてしまうかもしれなかった[危害を加えてしまう可能性があった]」ということです。過去の話です。
過去の話なので、「If bombs hit the zoo」の hit は過去形です(仮定法過去形ではなく、直説法過去形)。
dangerous animals might have got away の完了形は、過去の話と一致させるために必要です。しかし、hit という動詞は、現在形と過去形のいずれも hit なので、少し分かりにくいかもしれないと思いますので、別の動詞を使ってここでの“時制問題”を説明してみます。たとえば、
① 現在の“心配”: If I ask her straight out, she might get mad.(率直に訊いたら彼女は怒るかもしれない)。ここでの might の用法は『ジーニアス英和辞典』で説明している「形は過去形でも意味は現在の推量. ♦I wonder where Bill is now. He might be in London by now.(ビルは今どこだろう. もうロンドンに着いているかもしれない)」という用法と同じです。
② 現在の“想定”(仮定法):If I asked her straight out, she might get mad.(率直に訊いたら彼女は怒るかもしれない(ので、率直に訊くつもりはない)。ここでの might の用法は may の仮定法過去形です。
③ 過去にあった“心配”: I was worried ― if I asked her straight out, she might have got mad.(率直に訊いたら彼女は怒るかもしれない、と僕は心配していた)ここでの might の用法は『ジーニアス英和辞典』で説明している「[ S might have done]〈人・物・事が〉(ひょっとして)…であったかもしれなかった: ♦I told Jack that I might have made a mistake. (私はジャックに、私が間違いを犯していたかもしれないと言いました」)
④ 過去に対する“想定”(仮定法): If I had asked her straight out, she might have got mad. (率直に訊いたら彼女は怒るかもしれなかった(ので、率直に訊かないことにした)。
ご質問にあった might get away は、上記の ② に当てはまるので、不適切です。正確な時制の使い方は、「過去にあった“心配”」の ③ です。
ご質問ありがとうございます。ご参考にしていただければ幸いです。担当NBO
マーク・ピーターセンさんのご著書は大変示唆に富み、学ぶ点が多く、勉強になります。『日本人の英語』『続 日本人の英語』『心にとどく英語』『実践 日本人の英語』なども興味
深く拝読しました。『日本人の英語はなぜ間違うのか?』につき、ご質問と感想をお送り申し上げます。
1. (pp. 60-61) 紹介された英文日本国憲法において、第26条(教育)の shall be
obliged to have … receive ordinary education provided for by law では by
が用いられ、第30条(納税)の shall be liable to taxation provided by law に
by がないのは、前者は provided for all boys and girls … by law であり、後者は受益者を明示するには及ばないとの判断から、という趣旨(私の理解ですが)の説明があったほうが分かりやすいと感じます。
2. (pp. 110-116) 「it と that を使い分ける」は最も示唆に富む内容でした。これで思い起こすのは Neil Armstrong が1969年7月20日の月面着陸の第一声の That’s one small
step for [a] man, one giant leap for mankind. の that です。「it と that を使い分ける」により「特定のケース」のため、it よりも that が好ましいことは理解できますが、Neil
Armstrong 自身の直前行為を述べているにもかかわらず this でない理由を45年間不思議に感じています。機会がありましたら、[a] を言いそびれた理由とともに、この that についてご教授願えると益するもの大と感じます。
3. (p. 171) プロゴルファーへの夢についてお示しの修正文の when I am
sixteen/twenty years は失礼ながら「無意味な繰り返し」に感じられます。I want
to become a professional golf player, to win such s tournament at the age of
16 and the Masters at 20… で良いと思いますが、いかがでしょうか。
今後も示唆に富む著作を拝読できますこと、楽しみにしています。
鈴木哲様
ご感想とご質問をありがとうございました。
著者のマーク・ピーターセン先生に回答をいただきました。
1.おそらく「by がないのは」ではなく「forがないのは」のつもりで書かれた質問だろうと思いますが、前者の provided for の for の目的語は all boys and girls ではなく、education です。たとえば、“provide for a child’s education”(子供の教育に備える)や “provide for old age”(老後に備える)などのように、こうした自動詞として用いられるprovide の使い方は決して珍しくありません。
なお、後者のほうの provide は、taxation が目的語となる他動詞として用いられていますが、仮に for を入れて自動詞として用いられたとしても、意味は基本的に変わりません。
日本国憲法の“英語版”に見られる“表現の不統一”は、ただ単に執筆者の怠慢だと考えてもいいのでは、と思います。
2.私の it の that の使い分けについての説明は、「第7章 itとthatを使い分ける」のリード部分に書かれているように、あくまでも「前の文章や節を受けて「それ」という代名詞を用いる場合」の話であり、Neil Armstrongの That の使い方とは関係ありませんので「特定のケース」でもありません。このThatは、実際に踏み出す「一歩」のことを指し、もし一歩を踏み出す直前なら It もしくは This と言いますが、踏み出した直後の場合は、That と言います。
「[a] を言いそびれた理由」に関しては、下記の説明が最も有力だと思います:
「Recordings of Armstrong’s transmission do not evidence the indefinite article “a” before “man”, though NASA and Armstrong insisted for years that static had obscured it. Armstrong stated he would never make such a mistake, but after repeated listenings to recordings, he eventually admitted he must have dropped the “a”. He later said he “would hope that history would grant me leeway for dropping the syllable and understand that it was certainly intended, even if it was not said—although it might actually have been”.」
3.「I want to become a professional golf player」 に続いて「to win such a tournament」(そのようなトーナメント)という言い方は英語としてはつながりませんが、 確かにご指摘の通り、もっと簡潔な述べ方ができます。もし “the age of” も省いて “to win a professional tournament at 16 and the Masters at 20” と書けば、かなりすっきりするような言い方にはなります。
ご参考にしていただければ幸いです。
担当NBO