‘2017年発売’ カテゴリーのアーカイブ

『ショコラ』概要紹介⑤

2017年5月19日

『ショコラ 歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯』の著者、1950年生まれのジェラール・ノワリエルは、フランス社会科学高等研究院教授で、フランスにおける移民史研究のパイオニア的存在です。

ロートレックによるショコラのデッサン(©BNF)

ロートレックによるショコラのデッサン(©BNF)


本書の冒頭で、「レイシズムを告発するよく聞く道徳的な台詞(せりふ)の羅列は避けたかった。そうした言葉はもはや大して役に立たないだろう。何か新しいアイディアが必要だった」と言い、そのために、ラファエルというひとりの黒人奴隷を見つけ、その生涯を綴った動機を述べています。

「フランス革命」からそれほど時間が経っていなかった当時のパリは、「人間は生まれながらにして、みな平等である」という世界で最も「人権」を尊重していた場所、のはずでした。

しかし実際には、この「人間」という概念に、黒人は含まれていなかったのでしょう。

黒人は「猿から人間へと進化する途中の動物」とあからさまに考える人がまだ多かった時代だったのです。

それを示す一例が、本書に出てくる「順化園」というパリの名所のひとつです。

ここはほぼ動物園と変わりのないものですが、当時、アフリカからある黒人民族を連れてきて、世にも珍しい動物として「展示」したのです。

「順化園」で「展示」された、いちアフリカ民族(©BNF)

「順化園」で「展示」された、いちアフリカ民族(©BNF)


おそらくこの「順化」とは、自分たち「白人」こそが動物たちをより進化させる責任と力を持つ、という意味だったにちがいありません。

つい一世紀前には、まだ私たち人間のなかに、そのような意識が強く残っていた状況下で、ラファエルは道化師の大スターとなった。

当然ながら、ラファエルの揺れ動く人生の根底に、白人たちの心から消すことのできない「差別意識」があったのです。



以上、5回にわたってご紹介してきました『ショコラ』、ぜひ映画とあわせてご覧いただければ幸いです。

担当IKM


★好評発売中★
ショコラ



★本書が原案の映画『ショコラ 君がいて、僕がいる』公開中!


出演:オマール・シー、ジェームス・ティエレ
監督:ロジェディ・ゼム
(配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES)

『ショコラ』概要紹介④

2017年5月16日

『ショコラ 歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯』概要、前回からのつづきです。

●不思議な運命と、白人の「差別」によって翻弄されたラファエルの人生④

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パリの小児病院に請われて何度も慰問に訪れた晩年のラファエル(©BNF)


ついにふたりがヌーヴォー・シルクから解雇される日が訪れます。相棒フティットはそのために精神が錯乱し、ふたりはついにコンビを解消することになります。

その後、ふたりは何度となくヌーヴォー・シルクから請われてコンビを再結成しますが、新しい時代の波には逆らえず、もはやかつてほどの人気を取り戻すことはできませんでした。

生涯の相棒と思っていたフティットとも別れ、その後、ラファエルはサーカス団をわたり歩く一方で、演劇の主役にもチャレンジしましたが、結果は大失敗に終わります。息子と娘のふたりの子供は成長して父の職を継ぎ、サーカスの世界に入って一家の生計を助けました。しかし、娘は19歳で病死してしまいます。

悲嘆にくれつつも、道化師として必死に生き続けたラファエルでしたが、やがて、地方巡業先の宿の一室で、ひとり死を迎えます。(次回につづく)

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『BAR物語』が発売になりました

2017年4月5日

『BAR物語』が4月5日に発売になりました。

著者は「ウイスキーヴォイス」というサントリーウイスキーPR誌で創刊以来、編集長をつとめている川畑弘さん。

取材でおとずれた全国の名店や名バーテンダーさんとのさまざまなエピソードが綴られています。

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例えば、あるバーテンダーが一杯のグラスにかける情熱とこだわりが、こんな風に描写されています。


大きめのグラスにかち割り氷を二つ入れ、少量のウイスキーを注ぎ、ステアする。ステアとは、かき混ぜることで、道具はバースプーンと呼ばれる柄の長いスプーンを用いる。クルクルと何度もステアするうちに、氷の表面は溶け出して、嵩が減る。減った分の氷を足して、さらにステアを続けると、ウイスキーは、氷から溶け出した氷の水と馴染みながら、ほどよく冷える。そこへ水を加えて、丁寧なステアを繰り返すと、ウイスキーの香りがふわりと立ち上がり、薄めの水割りが完成する。

「ああ、旨い」

常連客の満足げな顔。

水割りは、たとえ薄めにつくろうとも、ウイスキーが本来そなえている味わいを生かすことが出来るのだ。そして、その一杯がつくられる過程では、バーテンダーの思いまでもが味となる。
               (Ⅱ 子育て、人育て 「二人の師匠」より)




ウイスキーや、そもそもお酒自体が苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが、良いバーかどうかはむしろノンアルコールのカクテルを頼んだ時の対応で分かるそうです。


巻末には本文で紹介しているバーの店舗情報と地図も掲載。東京だけでなく北海道から沖縄まで43のお店を紹介していますので、気になったバーがあれば、ぜひ実際に訪れてみてください。


最終章では開高健行きつけの赤坂の老舗バーでのエピソードをご紹介しています。開高が語った「いいバーの条件とは何ぞや?」という問いへの答えには、どんな仕事にも必要不可欠な《共感》というものへの大きなヒントがあるように思いました。

開高健がなんと答えたか、ぜひ手に取って確かめてみてください。

『怪魚を釣る』小塚拓矢さんトークイベントのお知らせ

2017年4月3日

インターナショナル新書『怪魚を釣る』著者の小塚拓矢さんがトークイベントに登壇します。


*   *   *


怪魚ハンター×動物写真家トークイベント

『冒険を“仕事”にしよう!』


日時:2017年4月20日(木)19:30~21:30(開場19:00)


会場:LOFT9 Shibuya


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野生動物を追う写真家・山形豪さんと小塚さんが、これまでに訪れた土地での仰天エピソードや、仕事観に迫ります! 「冒険で食べていきたい」「好きなことを仕事にしたい」という方はぜひご参加ください!

↓詳細・お申し込みについてはLOFT9 ShibuyaのHPをご確認ください。

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/62135

『「心の除染」という虚構 除染先進都市はなぜ除染をやめたのか』(黒川祥子・著)本日発売です!

2017年2月24日

福島原発事故から6年、放射能汚染の恐怖の中で生きていくということは、どういうことなのか。

『「心の除染」という虚構 除染先進都市はなぜ除染をやめたのか』は、開高健ノンフィクション賞受賞の著者が、自身の故郷・福島県伊達市に生きる人々を追ったノンフィクションです。

除染先進都市を謳っていたのに、次第に放射能汚染を過小評価していく行政と、子どもたちを必至に守ろうとする市民……。原発事故が、人々の生活や心にどのような影響を与えていくかが、克明に描かれています。

この3月で、自主避難者への援助が打ち切られるなど、原発事故がなかったことのようにされかけている今、ぜひ、読んでいただきたい一冊です。


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小熊英二さん『首相官邸の前で』刊行イベントのお知らせ

2017年2月13日

3月3日に発売になる小熊英二さんの新刊『首相官邸の前で』の刊行記念イベントを開催いたします。



*   *   *


『首相官邸の前で』刊行記念

「記憶」の共有が「社会」を成す

小熊英二×︎高橋源一郎 トークイベント


日時:2017年3月7日(火)19:00~20:30(開場18:30)


会場:青山ブックセンター本店 大教室



↓詳細・お申し込みについては青山ブックセンターHPをご確認ください。

http://www.aoyamabc.jp/event/ttpm/

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『ショコラ』概要紹介③

2017年1月18日

『ショコラ 歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯』概要、前回からのつづきです。


●不思議な運命と、白人の「差別」によって翻弄されたラファエルの人生③

フティットとショコラの珍しいコンビ写真(©CIRCOPEDIA)

フティットとショコラの珍しいコンビ写真(©CIRCOPEDIA)


天才道化師フティットとのコンビで人気と名声が決定的になったラファエルは、やがて、マリーという白人の既婚女性と恋に落ちます。

そして、マリーはふたりの子供を連れて夫のもとを去り、ラファエルと四人で生活する選択をします。

まだ黒人への差別意識があからさまだった時代、このマリーの勇気と決断は、人生を賭けてラファエルを愛するという強い意志があったからでしょう。

輝かしいスターの座と愛する女性との家庭。
初めて「人間」として最大のふたつの「幸せ」をつかんだと思ったラファエルでしたが、それは長続きしませんでした。

パリのモンマルトルやアメリカで生まれた新しい文化の波が一気に押し寄せ、人々の関心は新しい趣向のエンターテイメントに移ったため、フティットとラファエルのコンビの人気にかげりが見え始めたのです…。(次回につづく)

担当IKM



★本書が原案の映画『ショコラ 君がいて、僕がいる』、
いよいよ1月21日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー!


『ショコラ 君がいて、僕がいる』
出演:オマール・シー、ジェームス・ティエレ
監督:ロジェディ・ゼム
(配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES)


『ショコラ』概要紹介②

2017年1月16日

好評発売中の『ショコラ 歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯』概要について、ラファエルがパリでスターになった前回からつづきます…。


●不思議な運命と、白人の「差別」によって翻弄されたラファエルの人生②

ふたりが演じる様子を撮影した当時の写真(©BNF)

ふたりが演じる様子を撮影した当時の写真(©BNF)


初めて主役に抜擢されて演じたプログラムが見事な成功を収め、一夜にしてパリのサーカス界のスターになったラファエルは、その後、天才イギリス人道化師フティットと運命的な出会いをします。

彼もラファエルの魅力に惹かれ、相方に選ぶことを決めます。ここに、サーカス史上初めて、白人と黒人の道化師コンビが誕生したのです。

このふたりの芸の斬新さに誰もが絶賛し、その名と人気はまたたく間にパリ中に広まりました。

それは、ただ「殴られ、罵倒されて笑われる黒人」役だっただけのラファエルが、ついに「白人」と対等な立場で芸を演じる存在になったことを意味していたのでした。
(次回につづく)

担当IKM


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『ショコラ 君がいて、僕がいる』
出演:オマール・シー、ジェームス・ティエレ
監督:ロジェディ・ゼム
(配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES)

フランス本国で注目を浴び、映画化もされた感動の大著『ショコラ 歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯』好評発売中です。

2017年1月12日


カバー決定感動のヒューマン・ドラマを描いた『ショコラ 歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯』が、1月6日に刊行になりました。

本書は、歴史家である著者が、わずかに残る歴史のかけらを丹念に拾い集め、いまだ「差別意識」が強く残る19世紀末のパリで人気随一の芸人「ショコラ」になった、ひとりの元黒人奴隷の生涯を、600ページ近い分量で描ききった、まさに驚くべき大作です。

最初は編集担当の私自身、この圧倒的な文章量にひるむような思いでしたが、一度読み始めると、著者の緻密な調査と分析から鮮明に浮かび上がってくるひとりの黒人の半生と、それを取り巻く当時のパリの活き活きしたエンターテイメントの世界がリアルに伝わってきて、思わず引き込まれてしまいます。

物語の概要をできるだけわかりやすく、何回かに分けてご紹介したいと思います。
(さらに…)